結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】

余裕で司さんが来るはずの歩道を眺めていたが、10分経っても、15分経っても、司さんは現れない。とうとう約束の10時を過ぎてしまった。


まさか、今になって家を出るのが嫌になったとか?2年も引きこもっていたんだもんね、一歩踏み出すには、相当な勇気がいるんだろう。でも、婚姻届は司さんが持ってくる事になってる。このままじゃ入籍は出来ない。


仕方なく電話をしようとしたら、司さんから電話が掛かってきた。


「司さん、どうしたの?もう10時だよ。もしかして、家から出られないの?」


心配してそう聞くと、彼は落ち着いた声で『ごめん』って言ったんだ。


その謝罪は、ここに来れないからなんだと思った。けど、それは違ってた……


『……君とは、結婚出来ない』

「えっ?結婚出来ない?」

『あぁ、この結婚を言い出したのは俺なのに、本当に申し訳ない』


私達は愛し合って結婚しようとしたワケじゃない。けど、こんな形で破談にされるのは納得いかない。


「なぜ?どうして?理由を聞かせて!」

『それは……成加が……』

「成加さん?彼女がどうしたの?」


司さんは、今新幹線のホームに居ると言い、成加さんに会いに行くところだと私に告げた。


今朝、どうしても消す事が出来なかった成加さんの電話番号に電話してみたそうだ。間違いなく番号は変わっていると思っていたのに、その番号は生きていて、成加さんが出た。


彼女は司さんの声を聞くなり泣き出し、何度も謝ってきたと……


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