結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】

あんな会話の後で、変態ジジイにお尻を見せるのは抵抗があったけど、仕方なく痛い筋肉注射を打ってもらい出された薬を持って診療所を出る。


「AV貸す代わりに診察代ただにするってよ。良かったな」

「何が良かったのよ?それより、歩けるから下ろして!」

「ダメだ。まだフラついてただろ?無理すんな」


シャッターが閉まった誰も居ない商店街。私は一輝におぶわれ、家に向かっていた。


強がって下ろしてって言ったけど、本当は一輝の広い背中が心地良くて、このまま眠ってしまいたい……なんて思ってたりする。


「……ねぇ、一輝、あの事、まだ怒ってるの?」

「雅人の事か?怒ってるに決まってるだろ?でも、これで雅人の実力が分かったろ?アイツはトップコンサルタントにはなれねぇよ」

「でも、今までは、ちゃんと目標売上をクリアしてたんだよ」


一輝がフッと笑い背中が微かに揺れる……


「それより、なんだな……こうやって、ホタルをおぶって歩くの久しぶりだな。まだ結婚してた頃、ホタルが今日みたいに熱出した事があって、あの時もこうやっておぶってスケベジジイの診療所へ連れて行ったんだよな」

「そうだったっけ?」


覚えてたけど忘れたフリをして、ワザと素っ気なく答えていた。


「忘れたのか?あの時は、やれ、頭が痛い寒気がするって、ガキみたいにグズってた。その頃と比べたら、ホタルも大人になったな……」

「大人って何よ?私、もう29歳だよ。いつまでも子供じゃない」


一輝にとって私は、いつまで経っても10年前の子供のままなんだ……


「だな、10年も経っちまったんだ……でも、俺達が離婚してなかったら、今頃、どんな夫婦になってたろうな?子供は居たかな?」


―――子供?


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