結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
そして、父親がやっと口を開いたと思ったら、案の定、あの事を言い出した。
「アンタ、蛍子と結婚するなら、ウチの養子になってくれるんだろうね?」
「えっ?養子?」
素っ頓狂な声を出し、顔を引きつらせてる雅人さん。もちろん、彼にその話しはしていない。
「父さん、もういい加減、養子の事は諦めて……」
「バカ!ここが一番重要なとこなんだ。雅人君とやら、どうなんだね?」
詰め寄る父親に雅人さんは苦笑いを浮かべ返答に困ってる。
このままじゃマズい。ここはなんとか話しを逸らしてふたりの距離を縮めなくっちゃ……
「そうだ!雅人さん、夕飯はまだでしょ?良かったら父の作った惣菜食べてって」
頑なな父親だって、雅人さんに自分が作った自慢の惣菜を「美味しい」とか褒められたら、少しは機嫌が良くなるんじゃないかと思ったんだ。
私はひとりでテンションを上げ、テーブルの上に店で売れ残った惣菜を並べる。
「雅人さん、父の作る惣菜は美味しいって評判なの。遠慮しないで食べてね」
でも……
「あの……悪いけど、僕は煮物とかあんまり好きじゃないんだよね……出来たら洋食をお願い出来ないかな?」
まさかこの場面で彼がこんな事言うとは思わなかった。さすがに私もお口あんぐり。父親も絶句して固まってる。
絶望的な状況にもはや打つ手なしと、ガックリ肩を落とす私の後ろで、クスクス笑う声が聞こえてきた。
「全く空気読めてないな。だから雅人は契約が取れないんだよ」