あなたが教えてくれたから~約束~
「ありがと、吉原さん」
わたしはそっと身体を離す。
「汐里ちゃん……」
「わたしはもう、平気だから。吉原さんのおかげで強くなれたんだ」
その瞬間、強い力で抱き寄せられた。
「吉原さん?」
「汐里ちゃんに触れても、平気なんかじゃないんだ。僕は大人だから、わきまえなくてはならないことがある。だから……」
吉原さんはわたしを強い力で抱きしめながら言った。
「ごめん」と。
夏が終わる。
長くて短かった夏が。
夏が来るたびに思い出すだろう。
今までに出会った誰よりも好きだった人。
恋焦がれ、でも報われなかったこの想いを。