守られるのは卒業よ!
今まで腕力のないマリカにとって剣の重みは動きを止めるだけでも手首に負担がかかっていたが、剣がまるで包丁でも持っているかのように軽くなり、ブンブン振り回しても手に負担が残ることはなくなった。


「よし、かなり持久戦ができるようになったな。
じゃ、この続きは明日にしよう。」


「ありがとうございました。」



「あのさ・・・」



「はい!」



「この後、カナビスと過ごすのかい?」


「ええ、大した用事ではないんです。
私の部屋だったところとか、邸を案内してまわるだけなんですが。
このへんは、田舎だし、遊べるところも少ないですから、若い方は飽きてしまうでしょう?」


「あのな・・・俺も案内してほしいんだが・・・俺もいては嫌か?」


「そんなことは・・・さほど広い邸でもありませんから、すぐに終わりますし。
そもそも、どうして領主様がこの邸にお住いになろうと思ったのかも、私は不思議で・・・。」



「2人っきりのときは、領主様とは呼ばない約束だぞ。
ん・・・ゴホン!
俺は王族ではないし、家柄だって貴族だとか騎士でもないんだ。」


「じゃあ、魔導士?」


「いいや、俺の家は農家さ。」


「えっ・・・ぇええ!!!」


「驚いたか?剣術は王子や王室関係の騎士たちから習った。
そして、なんとなく気がついていた魔道については・・・ある天才魔導士の弟子になって精進したんだ。」


「天才魔導士って、まさか・・・オーレン・レイ・オーナ?」


「よく知ってるな。4歳の俺を発掘してくれて、学校に通わせてくれたのも彼だった。
学生しながら、帰ったら魔法の練習をしていたんだ。」


「そう・・・私はオーレンを道で拾って助けたことがあるの。」


「な、なんだってぇ!!オーレンは生きてるのか?」


「たぶん・・・。拾ったときはすごい血を流してて重症だったわ。
でも、私を見て助かったといって・・・あまり会話はしなかったけれど、私がとりにくい場所の薬草があったときも魔法で手に入れてくれて、すぐに煎じてから治療したの。」


「そうか・・・君が助けてくれたんだな。
オーレンはこの国を俺たちが滅ぼして突っ込む寸前まで、俺たちを支えてくれてたんだ。
でも、怪物3体相手にするには、荷が重すぎた。
墜落してどこにいるかもわからなくなってしまったんだ。
だから、俺たちはこの国の王族たちを倒して、この国に入り込まなければ全員死んでしまう運命と戦った。」


「治療して2日目にお薬の説明をした翌日には、オーレンはいなくなっていたの。
私に迷惑がかかると思ったのかしら。
でもね・・・私の回復魔法?この治癒力があがったの。
私に何をしてくれたのかしらね。お礼のつもりだったのかな。」
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