守られるのは卒業よ!
翌朝、皇太子妃アリシュレアの部屋へ向かう途中、中庭が騒がしくてマリカがのぞいてみると、そこではスウェルがオーレアに激しく抗議しているようだった。


「スウェル! 心配かけてごめんなさい。」


「マリカ、無事でよかった。
なら、今から邸へ帰ろう。
ハリィも君が顔を見せてあげれば、かなり安心できると思うよ。
彼は君が黄泉の国に行ってしまっていたら、自分のせいだとふさぎ込んだままなんだ。」


「えっ!あのハリィが・・・ふさぎ込んでいるの。
そんな・・・私はこのとおり、元気にしてるわ。
もう、気にしないでって伝えてください。」



「伝えて・・・って、君が直接会いにいけば済むことじゃないかな。
それとも、オーレンが意地悪して返してくれないのか?」



「そ、そんなことはないの。
私は、皇太子妃アリシュレア様の御傍係をすることになってしまったから、仕事を放り出して帰れないの。」



「アリシュレア様の御傍仕え?
そりゃ、困ったな。
俺もそうだが、邸のみんなや町の知り合いがみんな君がいないから、心配してる。」


「えっ・・・でも。」


「マリカの仕事が終わったら、僕が君たちのところに彼女を運ぶ。
それでいいんじゃないか?

僕が移動魔法を使うのは簡単なことだ。
けど・・・マリカは近いうちに僕の妻になる。

マリカが会いたい人を僕に伝えてくれれば、僕はいつでもマリカをその人に会えるようにしてあげよう。
しかし、僕の妻の訪問として・・・だ。」


「なっ・・・いくら俺の魔法の師匠だから、マリカを救ってくれたからとはいっても、いきなり結婚するはないだろう?
マリカは、こんな短い間に何もかも決めてしまう気なのか?」


「それは・・・私もお互い知らないのにって言ったんですけど・・・オーレアは私のことは全部知ってるからって・・・小さな頃の私も知ってるからって言うので。」



「マリカ、俺は君をもっと知りたいと思っていた。
君はまた俺を領主だからって身分の違いを言うのかもしれないが・・・俺自身は農民の出だと言ったよね。

だから君は何も気にすることはない。」



「君は過去はどうであれ、今は領主という役席に就いている。
地元で有力な家柄の娘を娶るべきだ。」


「マリカはもともと,騎士の家柄で今の俺の住まいに住んでいたんだ。
農民だった俺が領主をやるなら、マリカを指名してもいいはずだ。」


「それは無理だ。
残念ながらマリカはナギンが実の父親だとはわかっても、敵国の養女となったんだ。
今は奴隷の身ということになる。

だが、ここでアリシュレア様のお手伝いをして貢献するにしたがって、マリカは自分の名声やナギンの娘だということも人々に知られていくだろう。
僕は彼女の仕事の応援もしていく。

もちろん僕たちの私生活も充実させるつもりだしな。」


「そんな・・・横暴すぎる発言だ。
いくらオーレンでも、そんな勝手は聞き捨てならないな。」
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