ベビーフェイスと甘い嘘

***

「茜さん!お久しぶりです!」

式が始まって一時間近く経って、やっと主役と会話をすることができた。


司会の人が新郎新婦を紹介して、ケーキカットをしたら後はご歓談という非常にシンプルな流れの式で、本当に二次会のようだった。

新郎新婦がタキシードとウェディングドレスを着ているから、これは披露宴だって分かるくらいだ。


「奈緒美ちゃん綺麗。そのドレス、よく似合ってるね」


ご歓談からだいぶ時間も経っていて、お酒のほうもだいぶ進んていた私は、上機嫌でお祝いの言葉を口にした。私の言葉に、少しお腹にゆとりのあるプリンセスラインのドレスを着た奈緒美ちゃんは、しあわせそうな笑顔を見せた。


「しかし奈緒美ちゃんも思いきったね。千鶴ちゃんから聞いたんだけど、仕事辞めて旦那さんのお店手伝うんだって?」


奈緒美ちゃんの嫁ぎ先は羽浦市内でも有名なお弁当屋さんの『ウサミ』で、出産して子育てが落ち着いたらお店を手伝うつもりらしい。


「そうなんですよー。子ども預けて働くことも考えたんですけど……やっぱり難しいんで。これからは弁当屋の嫁で頑張ります」


『ウサミ』をよろしくお願いしますね!


明るくしあわせそうに話す奈緒美ちゃんを見ているうちに、ちくりと胸の奥が痛みだしてきた。


私は結婚した時、こんなに明るくて前向きな気持ちにはなれなかった。

仕事だって大好きだったし、本当は結婚してからも続けたかった。
< 12 / 620 >

この作品をシェア

pagetop