ベビーフェイスと甘い嘘
「さ、そろそろ話してもらおうかな。……直喜とはどうなってんの?」
隠さないで教えてよ。そう可愛いらしく微笑まれてぐっ、と言葉につまる。
それこそ、私がどうなってるの?って聞きたいくらいなのに。
あれから直喜は店にも姿を見せなくなってしまった。
『ごめんね』ってLINEを入れようと思ったけど、直喜が怒った理由が分からないのに私が謝るのも何だか違う気がして……結局送信していない。
黙ってしまった私にやれやれ、と言った感じで九嶋くんが話しかけた。
「ま、あいつの事だから、そのうち何でもない顔して現れそうな気もするけど。……ねーさんさ、最近何悩んでるの?直喜の事だけじゃないよね?」
俺で良ければ聞くよ、なんてさらっと言われた。どうして分かってしまうんだろう。
九嶋くんは私の事を鋭いって言うけど、九嶋くんだってなかなか鋭いと思う。
私は無言のまま、鞄から四つ折りにした紙を取り出して九嶋くんの目の前で広げて見せた。
「……あぁ、そういうこと?」
「そういうこと」
それは夫婦で話し合う前に、私の決意を伝える為にどうしても必要なものだった。
「話し合いはこれから……ってとこかな」
彼は白紙の離婚届を見ながら、核心をつくような質問をしてきた。
「何が原因?……もしかして、旦那にバレた?」
「直喜のせいじゃない」