ベビーフェイスと甘い嘘


***


「ずいぶんと遅かったんだな。……こんな時間まで翔のこと連れ回して。お前ちょっとは考えろよ」


帰宅して早々修吾に注意された。リビングの時計に目をやると、もう22時を回っていた。


確かにこんな時間まで子どもと一緒に出掛けるのは常識が無い事かもしれないし、修吾の言葉は正論だと思う。


だけどこっちだってわざと連れ回したり、遅く帰ろうと思っていた訳じゃない。


そう思ってもいつもの私だったら波風を立てないようにすぐに『ごめんなさい』と言って謝っているところだけど、気がついたら「いいでしょ。確かに遅くなっちゃったけど、わざとじゃないもの。翔だってまだ夏休み中なんだから」と口にしてしまっていた。


翔を抱えたままの私は、そのまま逃げるようにリビングを出た。


「翔、おうち着いたよ。ちょっとだけ頑張って着替えちゃおうね」


まだ夢の中にいるようにぼんやりとしている翔をパジャマに着替えさせて、寝室へと連れて行った。


寝かしつけを済ませてリビングへと戻る。喉の渇きを潤そうと冷蔵庫を開けると、夕食がそのまま置かれていることに気がついた。
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