ベビーフェイスと甘い嘘

「九嶋くんは自分勝手な人じゃないよ。……それに余計な事なんて絶対にしないでしょ?」

「何でねーさんにそんな事が分かんの?」

「……祭の日にヤスさんの所に行った時にね、少しだけ話をしたの。その時にヤスさんが、『あいつの周りは余計な事をしようとするヤツばっかりだ』って言ってたから」


『余計な事』と言った途端に九嶋くんの表情が変わった。祭の日、去り際に見た悲しみに溺れたような、泣き出しそうな表情が一瞬頭をよぎった。


「勝手に追いかけたり、ヤスさんの所に行ったりして……黙っててごめんね。詳しい話を聞いた訳じゃないし、事情は分からないけど、きっと九嶋くんは思いやりの無い人達に傷つけられたんじゃないかなって思ったの。……それなら、絶対に同じ事はしないって、そう思った」


憶測で話すのは間違っているかもしれない。でも九嶋くんは絶対に人を傷つける人じゃない。


「別に聞いても怒らないよ。ヤスさんは……まぁ、聞いても話さなかったと思うけど。でも、それだけで俺が我が儘でも自分勝手でも無いって言えんの?」


「それだけじゃないよ。私が辛い時に、九嶋くんは側にいてくれたでしょ?……でも、何があったのかは無理に聞き出そうとはしなかった」
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