ベビーフェイスと甘い嘘
「べそかきながら逃げて行ったけど……どんな止め方したの?」
「んー、別に。ちょっと脅したくらい。……前から思ってたけど、あいつ異常なくらい口軽すぎ。周りがあれこれ口を出さないほうが上手くいくって時もあるでしょ」
その『ちょっと脅した』内容が気にはなったけど、深く追及するのは止めておいた。
九嶋くんだって昔から初花ちゃんの事を知っている人だから、少なからず二人がうまくいくようにアシストしてくれたって事だろう。
「……そうだ、九嶋くん。私この前、鞠枝さんのお兄さんのカオルさんに会ったよ。芽依が退院するときに偶然、鞠枝さんと会ったんだ。……鞠枝さん、この話は初花ちゃんにはしないでねって言ってた」
『どうして言わないでって言ったのかな?』っていう風に話を続けなければ、こう言っただけで九嶋くんには全部通じるはずだ。
「俺もその話しようと思ってた。馨くんに会ったでしょ、って。……実はさ、馨くんから聞いたんだけど、再来週に仙台でエリア会議があるでしょ」
「うん。確か、店長と副店長が行かなきゃいけないのよね」
エリア会議とは、他地域の店舗と交流したり、エリアマネージャーや本社社員から話を伺ったり、新製品の試食や、これからの営業方針を聞いたりする勉強の場だ。
年に一回、商業施設などを使って大々的に開催される。