ベビーフェイスと甘い嘘
私が修吾の元に戻る選択を考えてしまった事さえ、見抜かれていたなんて。
「……もう大丈夫。ようやく覚悟ができたから。夏の時の……私の怪我の証拠、カメラに残ってますよね?私、夫と別れたいんです。力を貸してもらえませんか」
「アレを使ってでも、別れたいって事か。カメラの事は生方さんから聞いたのか?まったく、口が軽いな。……それにしても、よくあれが診察だって分かったな」
「カメラが無いってわざわざ言って警戒心を解いて、売り場から離れた資材庫へ連れて行った事。私へ質問しながら傷の状態を確かめた事、夫には連絡しないで欲しいとわざわざ言わせた事とか……後から色々考えたらそうなんじゃないかなって」
「だから、あなたはああいう状況に慣れてる人か……診断書を書くか、目にする側の人間だったんじゃないかなって思ったの」
前にオーナーが『樹は優秀だから、経営を手伝って欲しくて引っ張ってきた』と話をしていたのを聞いたことがある。
家族経営じゃないのに引っ張ってきたなんて、よっぽど優秀だったとしか思えない。弁護士か、医者か……
私が思いを巡らせていると、ふっ、とため息を一つ吐いてから店長は「そこまでお見通し、か」と笑った。
「確かに昔は『先生』と呼ばれていた時もあったけど、今はただのコンビニの店長だ。この事は一切、」「もちろん、初花ちゃんには言わない……唯ちゃんにもね。九嶋くんにも言わないほうがいいよね?」
「……話が早いな。言わないでくれると助かる。後、俺からもう一つだけいいか?」
「……どうぞ」
「妊娠、してなかったんだよな。……今の気持ちは複雑だろうけど、長い目で見たら絶対に今のほうが良かったと思えるようになる。だから、残念だなんて思うなよ。分かったな」