ベビーフェイスと甘い嘘
4

嘘なんか、つかない

「……奈緒ちゃん」



「やっぱり、ここにいたんだ」




直喜がさっき『ウサミ』の店の方だと指し示した方向に、奈緒美ちゃんが立っていた。



……いつの間にここまで来たのだろう。足音なんて全然聞こえなかったのに。



奈緒美ちゃんの視線は、私と直喜の繋がれた手に注がれていた。



「……っ、違うのーー」



見つかった事に慌てながら急いで手を振りほどこうとしたのに、直喜は『離さないよ』とでも言いたげに、さらに力を入れて手をギュッと握り直してきた。



「……直喜ちゃん。お義父さんが『直喜はどこをほっつき歩いてんだ!』ってめちゃめちゃ怒ってたよ。とりあえず、車は返してきたほうがいいと思うな」


はぁ、と呆れたようにため息をついて近寄りながら、奈緒美ちゃんは直喜の服の袖をキュッと引っ張った。



まるで『この人は私の物』と主張されたようで、その仕草に胸がドキリと音を立てる。



「……分かった。茜さんは俺が送って行く。……俺が連れてきたから。だからーー」

「大丈夫だよ。別に何かしようなんて思ってないから」



そう言いながらも、奈緒美ちゃんは私と全く目を合わせようとはしなかった。


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