一生続く恋をしよう。
「はぁー。今日は最悪だった。まじでついてない。もぅやだ。明日から行きたくない。」
そう呟きながら自宅の最寄り駅から歩く。
あのあとも散々だった。
先輩に頼まれた事も満足にできず、接客も、自分でも何言ってるかわからない最悪なものだった。
三木店長にも、呆れられた。
『今までで、一番ヒドイ。』
そう言われた。
黒木マネージャーにも、結局あれから会えず、ちゃんと謝る事が出来なかった。
「あたし………向いてないのかも。」
泣きそうになりながら、呟く。
「……まだたった1日だろ。何言ってんだよ。」
後ろから声が聞こえた。
そして、その声の主は私の隣に立った。
「はぁー。何、お前の家この駅なの?」
「くっくっくっ!!!」
「うるせーなぁ、もう。名前くらい普通に言えよ。」
「黒木マネージャー!!」
そう。隣に立ったのは、黒木マネージャーだった。
私は驚いて、黒木マネージャーをじっと見つめる。
「……変な顔。」
そう言って黒木マネージャーはまた歩きだす。
身長が180センチくらいあるだろう黒木マネージャーの歩幅は広くて、なかなか追いつけない。
それでもやっぱり昼間の事を謝りたい。
スーツの袖を引っ張る。
「あのっ!昼間の事、本当にすみませんでした!私、よく考えず空回りしちゃうこと多くて。あのっ!!」
「もういいよ。気にしなくていい。」
黒木マネージャーの手が私の頭をポンポンとする。
ドキっとした。
だって、彼氏いない歴3年の私。
男性に触れられたのは久しぶりで。
意識した途端に、顔が真っ赤になるのがわかる。暑い。
「まぁ、まだ1日めだし頑張れよ。つか、どこまでついてくんの??」
「へっ!?あ、あのその!そこの角を曲がってすぐのアパートです!」
「はぁっ!?マジぃっ?」
黒木マネージャーはビックリして目を丸くする。
「はい。あっここです。ここの2階。道路側の、その部屋です。」
私は自分の部屋を指差す。
「ふーん。恐ろしいくらいの偶然だな。」
そう言って私のアパートの向かい側に立つ、最近できたばかりの高級マンションに入っていく。
「えっ、えぇー!?黒木マネージャーの家って!?」
オートロックを解除してエントランスへ入っていく直前に、振り返ったマネージャー。
「覗くなよ。」
そう言ってマンションへと入っていった。
私はあまりの偶然にドキドキしながら部屋へ入る。
そして、洗濯物を入れようとベランダに出ると、向かいのマンションの三階から缶ビールを片手にこちらを見るマネージャーと目が合う。
うっそ!
部屋まで向かいなのー!?
私が驚いて口をパクパクしていると、マネージャーは、ふっと笑って部屋へと入っていった。
社会人、1日目。
新しい生活のスタートは、いろいろありすぎてとても疲れた。