一生続く恋をしよう。
あれから、1週間がたち、少しずつ、本当に少しずつ仕事も覚えた。


今日は早番なので、婦人服フロアの朝礼に参加した。


1週間ぶりに聞く、黒木マネージャーの声。


姿を見ることはあってもずっと声を聞くことはなかった。


私はこの前の夜の事を思い出すと少し顔を赤くする。


連絡事項を話す黒木マネージャーの言葉を、朝礼ノートにしっかりと書き留めていく。



「………それから。今月末でeyesは閉店。そこのスペースには、diamondがリニューアルオープン。1週間ほど工事期間になります。お客様に迷惑がかからないよう、またお問い合わせがあった際はきちんと応対してください。以上です。」



そう言ってマネージャーはさっさっと事務所へ戻っていってしまう。


そして残された婦人服フロアの各店舗の販売員。


「……頑張ったんですけど、ダメでした。」


そう言って寂しそうに笑うのは退店するeyesの店員。


「はぁー。うちもいよいよヤバイな。」

そう言うのは、スペースの縮小が決まったdiamondの店員。


「黒木マネージャー、容赦ないもんね。今までのマネージャーの中で一番見切り早いんじゃない?かっこいいけどほんと非情よね。」



みんなそれぞれが、eyesやdiamondの店員を励ましたり、マネージャーの悪口を言ったりしていた。


私は改めて厳しい世界なんだと思った。
でも、黒木マネージャーって非情なんだろうか。



「牧田さん。行くわよ。」


三木店長に呼ばれショップへと戻る。


「‥……私、ああいう向上心のない人達嫌いなのよ。確かに黒木マネージャーはシビアよ。見切るのも早い。でもちゃんと売上が伸びたブランドには相当のスペースをくれるわ。正当に、評価してくれる人よ。」



三木店長はそう言って、前を歩いていく黒木マネージャーを見つめる。


なんとなくだけど、三木店長って………


と思った。
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