したくてするのは恋じゃない


参った…。爆睡してる。凄い、この短時間で?…。

余程疲れているのだろう。
気を遣わず強めに揺すったつもりだ。…起きない。

どうしたものか…。
少し眠らせておくか‥。
クスクスッ、食後だから眠くなったのかな。

あんだけ揺すって起きないなら…。
抱いてるクッションをゆっくり取り上げた。

上着を脱がす事にした。

誤解しないで欲しい。決して寝込みを襲おうなんて…滅相もない、そんな大それた事をしようとしているのではない。
では何故そんな強行手段をかって?
…臭いだ、焼肉の。

神経質って程では無いが
ソファーが布製なので、出来れば臭い移りさせたくなかったから。

ボタンは外されていたから、肩をはだけるように手を入れ、片方ずつソッと脱がす事にする。

左肩を抜き、袖を抜く、背中を浮かせ、ゆっくり右側へ。

右肩へ手を入れようとした…、それは突然だった。

ガッと腕を掴まれ、あっという間に見下ろされていた。

…つまり、組み伏せられていた。


「け…剣吾?」

恐る恐る声を掛けてみる。

「はぁ…悪い、つい咄嗟に」

「い……いい、大丈夫、それはいいの。ちょっと驚いたけど。
それよりごめん。起こしちゃった。
寝てるから、起きるまでそのままって思ったんだけど…その、焼肉の臭いが気になっちゃって」

「いや、座った途端に睡魔が来て寝ちまった俺が悪い。
気ぃ、抜いたんだ。
…俺とした事が」

「あ、あれじゃない?
ビールも結構飲んだし、明日休みでしょ?
だ、だから、じゃない?」

もう…ずっとバクバクしてるんだけど、早くどいてくれないと、顔も近いし…。
あ、ばか。こんな時に、…夢思い出しちゃって。
余計バクバクするじゃん。
お願い剣吾、早くどいて…。

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