イクメン作家と恋心。初期版2巻(修正済み)
「あぁ、熱い物を食べる時は、
気を付けろと言っているだろーが!?涼花。
布巾をもう1枚持って来い。雑巾もだ!」
「あ、はい。」
私は、慌ててキッチンに行き
布巾と雑巾を水に濡らした。
あれ?
震えがいつの間にか止まっていた。
しかも、慌てたせいか
気持ちが落ち着いていた。
不思議……あ、まさか!?
パッと睦月君の方を見た。
そうしたらこちらをジッと見つめていた。
もしかして、わざとひっくり返したのかしら?
行儀のいい睦月君が、誤って
ひっくり返すなんて普段なら有りえない。
しかもタイミング良く…。
お陰で震える気持ちも手も落ち着いたし
誤魔化せた。
先生達も拭くのに必死でその話をしなくなったし
「おい。涼花。まだか!?」
「あ、はい。ただいま」
慌てて布巾と雑巾を絞り先生に渡した。
「それと睦月の服が濡れているから着替えさせろ。
後は、俺がやるから」
「は、はい。」
先生の言葉を聞き返事すると睦月君を見る。
そうしたら確かに服が濡れていた。
あ、やっぱり。
濡れているじゃない!?火傷は?
私は、抱き上げて着替えるために
部屋まで連れて行く。
「本当に火傷していない?痛い?」
睦月君は、心配そうに尋ねると首を振った。
我慢強いから心配だわ。
部屋に入ると上着を脱がせ新しい服に着せた。
そして睦月君に聞いてみた。
「ねぇ、もしかして…私のためにわざと
ラーメンをこぼしてくれたの?」
「…………。」
黙ったまま何も言わない。
これは、どっちなのだろうか?