ためいきのセレナーデ

振り返れない

ある夜の事だ。

私は彼の家に泊まりに行っていた。

秋で涼しいのに、何となく寝苦しく、私は彼が毛布をはだけている事に気がついた。

私が上体を少し起こし、彼の腰に毛布をかけたその時だ。

『どうした!?』

彼が大声で言った。
寝惚けているのだ。
こんな時は早くカタをつけたい。

「毛布かけてなかったからかけただけ!」

ところがその夜はいつものようにそれで眠らなかった。

彼が横向きの私の方に対面で左手をかけてガバッと起きた。

「……どうしたの?」

私は不安気に聞いた。

彼の様子がおかしい。

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