石田先生、忍者になるの巻
やばい、殺られる。
そう分かっているのに、体は動かない。血の臭いと死の気配に絡め取られ、ニヤついてゆっくり近づいてくる忍びから、視線を逸らすこともできない。
なんて無様なんだ…。
せ、せめて、ボクより下っ端の石田先生だけでも救わなくては。
ボクは教育係なんだから。
「てかこれ、ショー続いてんの?」
騒がしくて起こされた感がハンパない石田先生は、さも迷惑そうに忍びを睨みつける。
「こ、これは、ほ、ほ、本物のやつです‼︎」
声を限りに叫ぶと、金縛りの呪縛から解き放たれた。
間一髪、振り下ろされた刀をクナイで受け止める。
「あ、ずるーい‼︎自分だけ武器とかなくない?」
「しゅ、手裏剣投げて‼︎」
「いやいや、投げ方教わってませんけど?」
「いいから投げて‼︎」
「いいからって…」
演目用の手裏剣を手にすると、石田先生はあろうことか、左の掌に何枚も重ねて__右の掌でシュシュっと。
「そんなんじゃ投げれないよ‼︎」
「いや、だいたいこうじゃん。ハットリくんとかシュシュといくじゃん」
「人差し指と中指で挟んで、手首のスナップきかせて野球のボール投げるみたいに‼︎」
「注文多いな…こうか」
石田先生が手裏剣を投げた。
ちゃんと目を開いてって、言い忘れた手裏剣が、先生の手から離れる__。