秋麗パラドックス
「それに、八神くんと別れてから今までに付き合ったって、長続きしなかったのは、…心のどこかで八神くんを捜していたからじゃないの?」
「…っそんなこと、ない」
「嘘よ。だってみんな、どこか八神くんを匂わせるような風貌だったじゃない」
自分で言うのもなんだが、私は自分の容姿の割にはいい男ばかりと付き合ってきた。
街に出れば、『あの人カッコいいね』と言われるぐらい。
俗にいう、イケメンたちばかりだ。
そしてその人たちは、…私が通っていた大学の医学部に所属していた人たちばかりで。
言われてみれば、そうだったのかもしれない。
どこかで、徹を捜して、求めていたのかもしれない。
「ねえ、奈瑠。素直になって」
「…っ素直だよ、素直な気持ちを言ってるじゃない…」
「八神くんには時間がないの!」
「…時間がないってどういうこと?」
「…ご両親との約束で、今日、奈瑠と結婚を前提とした付き合いをするという話にならなければ、明後日、結婚を前提としたお見合いをさせられるらしいの」
それを聞いて、私の心は不覚にも動揺していた。
…何を考えているの、私は。
先程、突き放したんじゃない。
別に彼が他の女性と付き合ったって、どうこう言う権利は私にはない。
なのに、…おかしいよ、私の心。