幽霊の影
幽霊はあの時――

5年生の、最初のホームルームの時

――私の考えを完全に見破っていたのだ。



「ほらね、だから私の勝ち」


幽霊の、生気の無い淡々としたそんな声が聞こえたような気がした。



学級委員長に就任せざるを得なくなったあの日、どうして幽霊のおどおどした態度や弱々しい物言いにあんなに苛立ったのかが、何となくわかった。


幽霊は本当は、当時のクラスメートたちの誰よりも――

恐らく私よりも

――強かで傲慢で気位が高く、そして、聡明な子供だったのではないか。



当時の私は、一見気弱そうな幽霊の内面に潜んだ強かさや気位の高さ、聡明さを、無意識に感じ取っていたのかもしれない。


そして感じ取れはしたものの、どうする事も出来ず

この本に書いてある通り、私はこれもまた無意識に、彼女を恐れたのだろう。


恐れる事しか出来ない自分が、悔しかったのだろう。



あの頃の私であれば、その事実に気付いたとしても絶対に、意地でも、認めなかったと思う。


でも20年も経った今なら、素直に理解出来る。
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