幽霊の影
付箋紙が貼られた他のページにも、ざっと目を通してみた。


他の章も大体、幽霊が自分に危害を加えようとした同級生の裏をかいてやったとか鼻を明かしてやったとか(どうやら私とクラスが離れた中学2・3年の頃は、それまで以上に陰湿ないじめに遭っていたらしい)

そして彼女が常に「特別な、孤高の存在」としてクラスメートたちを見下し続けてきた事が、毒を利かせて面白おかしく綴られているようだった。


悲惨さを前面に出した「悲劇のヒロイン」のような立場を絶対にとらない辺りにも、幽霊の強かさが伺える。


当時の事を何も知らずに、ただこの本だけを読んだ者にとっては「胸がすくエピソード」になり得るだろう。



しかし――

そんな昔の話は今更どうでもいいが、その時の事について書かれた本を、よりによって私の娘の瑛梨奈が愛読しているとなると、やや複雑な心境ではあった。



当然、著者である幽霊に共感しての事だろう。


少なくともこの本は「その他大勢」に共感出来るようには書かれていない。
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