幽霊の影
私が夫の顔から目を離さずにいたからだろう。


「どうかした?」


今度は、夫が尋ねる。



「今日、友達と一緒に夕飯食べに行ったんだけど、帰りに優斗くんそっくりな人を見たから……」


女連れだった、とは何となく言わないでおいた。



「それで、俺が仕事サボって遊んでるんじゃないかって?」


夫は力無く笑い「そんな暇無いよ」と言った。



「そっくりって言っても、横顔しか見えなかったんだけど。

その人も同じような髪型で、あの黒いジャケット着てたんだよね」


「そりゃあこんな髪型、別に珍しくも何ともないし、あんな何の変哲も無いジャケットだって、サラリーマンの3人に1人は着てそうなもんだろう」



――何の変哲も無いって……

それ私が選んであげたものじゃん。


せっかくいいブランドで見立ててあげたのに。
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