夏休み









「……キミには僕より
もっと相応しい人がいるよ。

僕と違い、
夏が終わってもいなくならない人が。

キミを笑顔に出来る人が」






あたしのこぼれ落ちる涙を、そっと拭ってくれる。

その優しさに涙が溢れて止まらない。






「来年の夏休みにまた来るから。
その時までに幸せになっていてよ。

僕のことをここまで好きでいてくれるキミには
笑顔でいてほしいんだ。

1年中、季節なんて問わないで」






ポンポンッと、優しく頭を撫でてくれた。

あたしは顔を上げた。






「……大嫌い。
キミはすぐにいなくなってしまうから。

だけど大好き。

ずっと待っているから。
来年の夏休み、キミに会える日を」






あたしは空っぽになった缶ジュースをごみ箱へ投げ入れると

彼に背を向けて自宅まで走った。








< 5 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop