キンモクセイ(仮)

頂きます

リビングに行くと、テーブルの上にはサラダとウインナー、スクランブルエッグ、トースト、カフェオレが並べられていた。
いつもの朝はコンビニで買った惣菜パンとカフェオレが定番な私にとっては、とんでもなくVIP対応だ。

「どうされましたか、来春様?朝は和食が良ろしかったですか?」
「い、いえ!!とても豪勢な朝食で驚いていただけです…」

ソファに座ってカフェオレを一口飲むと、ホッとする。
ホントはカフェオレ飲む前だったけど、手を合わせて頂きますを忘れずに朝食に手を伸ばし始めた。
パンはサクサクで、スクランブルエッグはふわふわでとろとろし過ぎてない絶妙なバランスで出来上がっている。
サラダとウインナーも一口サイズに切ってあり、ウインナーに至ってはタコさんウインナーへ進化していた。
やばい、これを毎朝ありつけるなんて、幸せすぎて死ぬかもしれない…!

その様子を見て、瞳人も内心ホッとしていた。
もし、部屋から引きこもって出てこなかったら?
出てきたとしても、ここから出ていくと言われたら??
昨夜から延々と考えていたら、いつの間にか朝になっていたことに驚いた。
急いで来春の元へ向かうと、ぬいぐるみを抱きかかえて寝ている姿が目に入って一息。
自分の抱えている仕事と来春の朝食の準備をして起こしに行き、今に至る。

「ご馳走様でした」
「はい、お粗末様でした」

来春が自分の作った朝食を残さず食べてくれた。
いつもやっていることを好きな人がやってくれるとこんなに嬉しいものなんだな…。

「とっても美味しかったです、ありがとうございました」
「そう言っていただけて何よりでございます。
 失礼ですが、来春様。本日は外出の予定はございますか?」
「いえ、今日は家にいるつもりですが、何か?」

折角の土曜日である。
自分の部屋で撮りためてたバラエティー番組を見ながら、ビールを飲み笑う。
これ以外の過ごし方を最近していないため、休日のルーティーンになりつつある。

「いえ、ありがとうございます。
 本日は天気も良いので洗濯をしようと思うのですが、洗濯をご一緒にやっていただけると助かるのですが」

洗濯って機械に入れるだけで出来るはずだったよね?
それならすぐ終わるし、家事の一つだからいずれ出来るようにならないといけないやつだもんね。

…と軽く考えていた数分前の私に言いたい。無知は怖いと。
< 10 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop