ゆりかご
今日の、少し強めの風が、そんな気持ちを吹き飛ばしてくれないかな。


キーン…コーン……

「じゃぁね!今日は急ぐから、行くね!」

「はいはい、じゃぁね〜。」

愛衣が軽く手をあげる。

放課後になり、あたしはみんなとの挨拶もそこそこに、昇降口へ向かった。

翔矢との待ち合わせは17時半ーーー電車で化粧を直して…何とか間に合いそうだ。

せっかく翔矢が部活を早退してきてくれるんだから、あたしが遅れる訳にいかない。

少し走ればいつもより1本早い電車に乗れるかも…。

「……。」

あたしは小走りで校門を抜けた。

生ぬるい風が身体にまとわり付いては離れるーーー追い風が幸いして、あたしの足取りは更に軽快になった。


「清田さん!」

呼ばれて振り返るよりも先に、あたしの隣に追いついてきたコータロー。




< 101 / 272 >

この作品をシェア

pagetop