ゆりかご

3

「お兄ちゃん、あたしのパンにもマーガリン塗っといて!」

「あぁ⁈俺にモノ頼むなんて10年早い!」

翌朝、久しぶりに朝寝坊したあたしーーー昨日色々ありすぎて、なかなか眠れなかったんだ。

だけど、不思議とスッキリした気分で目覚めたーーー寝坊さえしなければ、いい朝だったかもしれない。

「お兄ちゃんのケチ!」

「何とでも言え。」

涼しい顔してコーヒーを飲むお兄ちゃんを横目に、急いでパンを口に運ぶあたし。


昨日、結局雪乃からメールの返信はなく、あたしが翔矢に返信することもなかった。

昨日のコータローの腕の中は心地良くて、まるでゆりかごに揺られているみたいだった…。

優しく包み込むような腕は、あたしが離れたい時にいつでもそう出来るようにしてくれているのだと、身体で感じた。

「行ってきまぁす!」

勢いよく家を出て、曇り空の下を走った。

すぐににじみ出てくる汗が、今のこの季節を物語る。





< 161 / 272 >

この作品をシェア

pagetop