サクラノシタ
第1章 桜

ーーーーー・・・ねぇ、知ってる?
桜の木の下にはね、死体が埋まっているのよ。

小さい頃、誰に言われたか忘れたが
何となく覚えている昔話、噂話、都市伝説の類が不思議とある。

それは、大きくなった今でも
なぜだか忘れることなく、ふとした瞬間に
思い出したりする。

『桜の木の下には死体が埋まっている』
この話もそのひとつだ。

桜の花の淡いピンクの色は
木の下に埋まっている死体の血を啜って
色がついているのだ、と。

高校生になった今でこそ
『馬鹿らしい』と思えるが、小さい頃は
根拠もなく信じていて桜の木が怖かった。
春になると咲く満開の桜を見て
『綺麗だ』と『お花見だ』と騒ぎたてる
大人たちを見て不気味に思ったものだ。

今は無論、そんなことはない。
お花見は友達と盛り上がる
ひとつのイベントになっている。

思えば、小さい頃はそうだった。
なんの根拠もなく大人たちのいうことを
信じていた。
それが、『絶対』で『正しく』て
『信じていいモノ』だとなんの疑いもなく思っていた。

大人たちは皆、正しいことしかしないと
思っていた。

ーー・・・決してそうではないのだと
気づくまで、そう時間はかからなかった。



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