私を本気にさせないで
まるで大森君の視線が縛りつけているように、金縛りにあっている気分だった。
瞬きもできず、ただ見つめ返すしか出来ない。

大森君の瞳ってこんなにもキレイだっただろうか……?

あまりの漆黒に見惚れてしまうほど――。

そんな私に大森君は表情を変えず、囁いたんだ。

「幸……」

愛しそうに私の名前を呼ぶ彼に、心臓が悲鳴を上げた瞬間、初めて交わしたような頭の芯までとろけてしまうキスが落とされていく。
逃げる私の舌を絡め取り、深く、深く――。

どれくらいの時間、唇を奪われてしまっていただろうか。

きっと椅子に座ったままではなかったら、私は自分の足で立ってなどいられなかった。
唇が離された頃には、すっかりと息は上がってしまっていたのだから。
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