放課後コイ綴り
木の枠組みの扉を開ければ、ぬくもりがふわりとあふれる。
冬の名残りのある外の寒さとは違う、そこはあたたかな光が降り注ぐカフェ。
店員に促されるままに、中へと足を踏み入れて注文を済ませた。
ミルクティーがのどをすべり落ちて、ふうと息を吐いた。
窓の方へと視線を向けると、ちょうど約束していた人の姿。
店内に入ってきた相手はきょろきょろと動かしていた視線をわたしに向けて、嬉しそうに顔を綻ばせる。
「ふみ、お待たせ!」
親しげに名前を呼んでくれる、昔から変わらない弾けるような声。
大人っぽいショートカットからのぞく耳にはシンプルで美しいピアスが輝いている。
「彩先輩、こんにちは」
日生 彩(ひなせ あや)さん。
いつも明るく誰とでも親しくなれる彼女は、わたしのひとつ年上で、高校時代の部活の先輩なんだ。
あの頃から長いような短いような、なんだか上手く言葉にできないけれど……時は、流れた。
社会人になってから、もう4年目。
高校を卒業して8年、彼と────一条 要(いちじょう かなめ)くんと最後に会ってからも同じ年月が過ぎた。
今年わたしは、26歳になる。