魅惑の純情泥棒


「鹿嶋の彼女って美人だよな。」

高校近くのコンビニを過ぎた辺りで杉田がいつものぼんやりした瞳のまま呟いた。

ああ?と誠太は不機嫌そうに振り向く。

杉田の方が大分と背が高いので、自然と見上げながら睨んでしまう。杉田の隣の田中がそれを見てクスリと微笑んだ。

「セイちゃん目が怖いよ?」

「このメンバーであいつの話はヤメろ。」

誠太はぶっきらぼうに吐き捨て、クルリと前を向く。

「なんで?いいじゃん。本当に美人なんだし。自分の彼女褒められて嬉しくない?」

「眼鏡に黒髪ロングに成績優秀なんだろ?真面目っていうか、清楚っていうか。…ちなみにもうやったの?」

「な?こういう方向に行くからヤメろっつってんのに。」

心底嫌そうに誠太はそう呟いた。

友人とやれ恋愛だの惚れた腫れただのと言い合うのはこそばゆくて堪らない。この手の話は苦手だ。

そんな誠太にちゃっかり美人の彼女がいるもんだから周りはつつきたくて仕方がなくなるのも致し方ない。

「えっと?どっちから告ったんだっけ?」

「知るか!」

「どっちだっけ三谷?」

「あぁ、誠太からだよ。」

「三谷てめぇ…!」

あっさり打ち明けられて誠太は顔を真っ赤にしながら怒鳴った。

三谷はそんな誠太を一度も見ずになにやらポチポチとスマホをいじっている。

「あははっセイちゃんそんな可愛い顔で怒っても誰も怖がらないよー?」


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