恋愛格差
それからというもの、優は会社には来なくなった。

私のメールにすぐ『わかった。日曜日なら空いてるから家に行ってもいい?』と返事があったのみ。

私の怒りが収まるのを待つ作戦らしい。
私はもう怒ってる訳ではないのだけれど。



週末はやっぱり掃除と洗濯。
日曜日は優が来るのだから念入りに掃除をした。

本当は外で会う方がいいのだろうけど、
話が話だけに外といっても場所を選ぶ。

憂鬱だなぁ……

どうやったら優のあのキラキラ甘々攻撃に耐え、
ミッションを遂行することが出来るのだろうか。

勝てる気がしない……

今の正直な気持ち。

あんなに浮気をしていて、まだ私に食らいつこうとするのは愛なのか、はたまた執着心か。

このままなし崩しに優とよりを戻すと
私の結婚はいつになるやら。

そこに母の顔と青い表紙の見合い写真が浮かんできた。

見合いかぁ……



風呂掃除を始めたとき、充電器の上のスマホから着信音が聞こえた。

手と足を拭いて、スマホを覗き込む。
見たことのない番号だ。

もちろん私の携帯には登録されていない。

「はい……」

『あ、佐藤と申しますが藤原さんの携帯ですか?』

先に名乗ってきたので安心して答える。

「はい、そうです。」

『あの……とーこ?カズなんだけど……覚えてるかな?』

やっぱり!
ほんの数日前聞いたばかりの名字。
懐かしくてテンションが上がる。

「カズ!久し振り!何年ぶり?いや十何年ぶりだね!」

『お~よかったぁ!覚えててくれたんだ。
いや、オフクロに連絡先聞いてかけてみたんだけど……今大丈夫?』

ププッ
オフクロだって……
昔は「ママ~」だったのに。

「大丈夫大丈夫。見たよ~見合い写真!
男前になっちゃって~アッハハハ!」

「や、やめてくれよ~オフクロ、町内中に見せて回ってんだから……お陰で世話好きの老人たちが色々話持ってくんだよ……」

「いいじゃん。相手いないならお見合いすれば!」

「他人事だと思って!お前も明日は我が身だろ!」

私は相手いるもんね!と言おうとしていないことに気づいた。

「……そうか…。
あ、でも私はしたいよ。お見合い!

ご趣味は~とか言われてみたい!」

「ほんとかよ……」


ものすごく月日が経っているのに
まるでさっき別れた友達のように話せて嬉しかった。

明日の優との憂鬱な話し合いを忘れそうになるくらい。

だから
「お互い近場に住んでるみたいだし、今度飲みに行かね?」
と誘われて

「いいよ~カズ、飲めんの?」
「当たり前だろ!ふざけんなよ!」

私とカズの再会が決まった。






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