恋愛格差
パジャマ姿の私とカズと彼女さん。
ダイニングテーブルに向かい合ってビールを飲んでいる。

「さてと……まずは自己紹介しとくわ。私は鎌倉幸代(かまくらさちよ)。カズとは1年前からここで一緒に住んでるの。」
「あ、カズの幼馴染みの藤原透子です。」
「俺は…「あんたはいい」……ハイ…」
幸代さんの軽い突っ込みに、カズは口を尖らせてズズッとビールを啜った。

「吉岡くんのことね。

入社から最近まではすごく仕事熱心で、仕事もできるし最年少課長になるだろうって言われてた。
だけど、先月?いや先々月ぐらいかな?仕事残ってても早退してみたり、遅刻したり、私用電話が多くて。それでも仕事はこなしてたから上司も特に言わなかったの。ただ、下の者に示しがつかない……みたいな。付き合いも悪くなったし。
これは知ってる?」

「……多分…ハイ…」
おそらく私が初めて別れを告げて、逃げ回ってた時期だろう。うちの会社にも来てたし、電話やメールも多かった。

「それはいいのよ。一瞬だったしね。

最近よ。
前みたいに仕事に打ち込むようになって上司共々喜んでた。大きな仕事取ってきたり。出世頭復活だなぁって言ってたとこ。
上の空な時が多くてポカミス。それが続いて、ミスを取り返すのに残業して。
先週だって見積りの桁が間違ってて。2件もよ!
正式じゃないから上司も確認してなかったみたいで。
まだ送り先を間違えなかっただけマシだろうけど。
こんなこと、吉岡くんに関しては無かったから。

しっかし最近の仕事は要領悪いったらありゃしない。
今日も私がその件フォローしてたんだけど。」

「それは……スイマセン……」

「プライベートでなにかあったの?」

「わかりません。毎日終電だし、週末は物凄く疲れて帰ってきて。お酒も入ってるし、香水の香りとかさせて。
接待とかあったりします?」

「最近はほとんどないわよ。」

やっぱりそうか。

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