恋愛格差
一時間弱でようやくまたあの茶色のマンションに到着。

時刻は夜9時。
そして週の半ばの水曜日。
明日も仕事なのに、今日は寝られないかもしれない……

ため息をつきつつ、インターホンを鳴らすと
「開いてるよ~」と聞き慣れたカズの声が。


玄関を開けるとカズが嬉しそうに立っていた。

「いらっしゃい。」

「ごめんね。こんな平日に。」

「いいのいいの。さっちゃんが呼んだんだろ?……思い付いたら即行動なんだよね。」

ハハッと笑うが苦笑い。
リビングへ通され、ソファに座る。

「さっちゃん、もうすぐ帰るから待ってて。何飲む~?ビール?」

「幸代さんが帰ってきてからでいいよ」
と言うや否や、走ってきたらしい勢いで玄関から彼女が飛び込んできた。

「部長に捕まって遅くなった!
カズっ!とりあえずビールちょうだい!」

ここは居酒屋ですか……

「……お邪魔してます。走って帰ってきたんですか?」
「あ、ごめんね。こんな時間に呼び出したりして。もう何がなんでも聞きたくって。」

「すいません。あれから連絡もしないで……落ち着くまで電話できなかったから」

カズがよく冷えた缶ビールを持ってきて、3人のコップに注いでくれた。

「じゃ、とりあえずカンパーイ!」

カチンとグラスを合わせ、幸代さんはゴクゴクッと飲み干す。

「ん?何の乾杯?」
ボケ突っ込みを一人でやったので、私は思わず笑った。

なんだか台風みたいな人。

私が笑ったのを見て幸代さんは
「よかった。透子ちゃん笑ってる。」
と、ホッと息をついた。
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