恋愛格差

「いらっしゃいませ」

店員さんの声にあっと気付く。
久しぶりの優に見とれていたけど、立ちっぱなしの優に「座れ」とも声をかけてなかった。

「あ、座って……」と横の席に置いていた自分のバッグを取ろうとすると
「いいよ。あ、すいません。出ますので……」
と店員さんに断り、
テーブルの上の伝票を持って
反対の手で私の腕を引っ張った。

一旦、腕から手を離した彼は
スマートに会計を終え、私に財布を出させる間も与えなかった。


店を出たところでようやく
「あの、ありがとう。」と言うと
少し屈んで顔をのぞき込むように「ん?」と言うその表情にキュンとくる。

あれ?あれ?
なんか、付き合い始め……というより、付き合う前みたいになってる、私?

「何かちゃんとしたもの食べようか?透子は何がいい?」

「な、なんでも!」

「透子はいつもそうなんだからなぁ~」

このやり取りがスゴく嬉しい。

問題を棚上げしてるのはわかってるんだけど、
ほのぼのとした恋人同士の会話に心がホッコリしてきた。

なのに


「最後ぐらい、良いレストランでも行こうか。」


頭を後ろからガツンと殴られるような衝撃。

ショックすぎて言葉は出てこない。

横に立つ優を虚ろな目で見上げると
悲しそうな目でゆっくり私の視線を受け止めた。

「何が食べたい?透子の望むようにして。」

瞼が熱くなってきたけれども、そこは何度も瞬きをして気分を落ち着けようとした。
まだ泣いちゃダメだ。

優の前に回り込み、ハッキリと
「何にも食べたくない。話がしたいだけ。」
言ってやった。

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