異聞三國志
「貴公は医術の心得でもあるのか?」


「多少は。しかし、専門は薬です。しかし、この時代の薬では治すことは不可能です。切除しかないのです。切除しないと手遅れになる可能性が。」


「華佗の弟子かぁ、聞いたこともないが、華佗を推挙した虞翻ならば或いは知っているかも知れぬ。私が紹介状を書こう。」


この時、虞翻はもう老人であった。


「何者じゃ?」


訪問するなり、逆に質問された。


「蜀の使者で諸葛庶というものです。」


「諸葛?孔明の親類か?」


「まあ一族です。」


「まあよい、まあその孔明の親類が何用じゃ?」


「実は亡くなられた華佗様のお弟子さんを探しているのです。」


「弟子じゃと?華佗は弟子なんか・・・。うっ。」


「どうされましたか?仲翔[虞翻の字]殿。」


「一人おるにはおるが・・・。もう出家して一種の世捨て人のような暮らしをしているとか。師匠の菩提を弔うとかで。」


「でどちらに?」


「建安郡の山の中らしいが、あそこは夷狄の山越の住みかだ。容易には探せまい。」
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