異聞三國志
「我が閣下、お腹の中の傷の病。それをとれば、治るはず。それができるのは、華佗殿の弟子であった貴殿のみです。」


「弟子といっても、まだ少年だったから、本当の手伝いしか、していない私に先生の代わりなんか勤まるわけがない。それに私はもう医術は出来たら忘れたい。あの先生のような神のような手さばきは誰にも真似できない。私は山越族の傷の手当てがせいぜいだ。」


「でも貴方はたぶん青嚢書をお持ちのはずだ。」


「うっ。」


青嚢書とは華佗が自分の医術を後世に伝えるために表した書であるが、公式には失われた書物になっている。


「それほど信頼してくれた華佗先生だからこそ、菩提を弔う気になったのでは?だからこそ、華佗先生の医術をこのまま埋もれさせていいんですか?」


「し、しかし・・・。私にはもう山越の患者が沢山いる。彼らを見捨てられない。」

と言っている最中にも、周りの草むらからどこからともなく、山越族が現れた。

一人、二人と増え、その数は30人程になった。

「我らを見捨てるのか。」

「裏切り者。」


と口々に言いながら山越族はジリジリと迫ってきた。
< 23 / 93 >

この作品をシェア

pagetop