彼女が虹を見たがる理由
見えるんだ。
村田さんは想像以上にパワフルだった。

遊園地といえば絶叫マシーンも多く、女の子はそれを怖がったりする。

しかし村田さんは絶叫マシーンが大好きなようで、次から次へとジェットコースターをはしごしていた。

「なぁ、ちょっと休憩しないか?」

この遊園地でベスト3に入る絶叫マシーンに連続で乗った俺はそう提案した。

先を急ごうとしていた村田さんはピタッと立ち止まり、そして振りむいた。

その目はどこか人をさげすむようなジトッとしている。

休憩するのがご不満の様子だ。

だけど連続で絶叫マシーンに乗らされた俺はさすがに目が回っていた。

「平野雄和は絶叫マシーンが苦手?」

そう聞かれて俺は笑ってしまった。

苦手なんてことはない。

今だって3回も乗った所なんだから。

「苦手じゃないけど……いや、やっぱり苦手かもな」

全然平気そうな顔をしている村田さんを見ると、嫌でも苦手な部類に入るだろう。

「休憩してて」

村田さんはそう言って近くのベンチを指さすと、1人で次のマシーンへと歩いて行ってしまった。

俺を気にして一緒に休憩する。

なんて考えは毛頭なさそうだ。

「まぁ、こういうのも新鮮でいいんだけどな」

俺は1人でつぶやきながらベンチに座った。

村田さんの姿はあっという間に人ごみに紛れて見えなくなってしまった。

「しまった。番号くらい聞いておけばよかった」
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