彼女が虹を見たがる理由
万が一迷子になるかもしれないし、変な男が声をかけてくる可能性だってある。

追いかけようか。

そう思ってベンチから腰を上げた時、人ごみに隠れたはずの小さな体が戻って来るのが見えた。

「村田さん……?」

ブルーのワンピースは時々よろけて、人にぶつかっている。

明らかに体調が悪そうで、俺は慌ててかけよった。

「おい、どうしたんだよ」

「ちょっと……気分が悪い」

村田さんは青い顔でそう言った。

さっきまで平気な顔をしていたのに、やっぱり乗り物に酔ったのか?

そう思いながらベンチまで戻り、俺は村田さんをそこへ寝かせた。

「大丈夫か? なにか、サッパリした物を飲むか?」

「……ジンジャーエールは嫌いじゃない」

「そうか、わかった」

俺は了承してすぐにジンジャーエールを買いに行ったのだった。
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