彼女が虹を見たがる理由
☆☆☆

それから10分後。

随分と顔色のよくなった村田さんはジンジャーエールを飲みほし、さっきまで寝転んでいたベンチに座っていた。

「酔いが覚めたか?」

「元から酔っていたわけじゃない」

「は?」

俺は首を傾げて村田さんを見た。

あれはあきらかに酔ってただろ

「その先にある絶叫マシーン。昔事故があったみたい」

「え? そうなのか? でも、今は安全なんじゃないか? 運転も再開しているし、何も問題はないだろ」

「問題なら、ある」

村田さんはキッパリとそう言いきった。

「なんだよ、身長制限にひっかかったか?」

冗談でそう聞いたらにらまれてしまった。

「事故で死んだ男の人が、まだそこにいる」

「は……?」

「成仏できてない」

「なに、言ってんだ?」

俺はわけがわからず瞬きを繰り返した。
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