彼女が虹を見たがる理由
尊敬する人
不思議ちゃんと別れて5分ほどで家に到着した。

「ただいまぁ」

そう言って玄関を開けて、そこに俺と同じくらいの大きさの皮靴があったので、俺は大慌てでリビングへと向かった。

白い立派なソファに腰を下ろしてニュース番組を見ている父さんの姿に、自然と笑顔になった。

「父さん、帰ってたんだ!?」

そう言い、子供のように父さんの隣に座る。

「あぁ。今日は久しぶりに早く仕事を切り上げる事ができたんだ」

俺の父さんは警察のお偉いさんだ。

仕事が忙しくなるとなかなか家に帰ることもできなくなる。

一人っ子の俺が一番尊敬している人物だった。

「お疲れ様! ビール飲む? 持ってこようか?」

父さんは家に帰ってくると必ずビールを飲む。

そして言うんだ『やっぱり家で飲むのが一番うまい』って。

それは家の居心地がいいという意味なのだと、俺は勝手に解釈していた。

「いや、まだ時間が早いってさっき母さんに言われたばかりなんだ」

「俺が交渉してきてやるよ!」

そう言うと同時にソファから立ち上がり、隣のキッチンへと向かった。

キッチンからは夕飯の美味しそうな香りがしてきている。

「母さん!」

「あら雄和、おかえり」
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