Bartender
その日の夜。

1度自宅に帰るとスーツから私服に着替えてハンカチと財布とスマートフォンを手に持つと、家を出た。

エレベーターを使って1階まで下りると、伊地知くんが待っているバーへと足を向かわせた。

「いらっしゃいませ」

伊地知くんがいつものように私を迎えてくれた。

「こんばんわ」

私はカウンター席に腰を下ろした。

「あれ?」

伊地知くんが何かに気づいた。

「もしかして、1度家に帰りました?」

やっぱり、気づいたようだ。

そう思いながら、
「うん、返したいものがあったから」

私は首を縦に振ってうなずくと、手に持っているハンカチを伊地知くんの前に置いた。
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