温もりを抱きしめて【完】
要さんは震え出した私の手を取ると、その大きな手でギュッと握り締めてくれた。

もう片方の手はトントンと背中を優しく撫でてくれて、「もう大丈夫」と言ってくれているようだった。



きっと家に着いた私を見てから、要さんは気付いてたんだ。


私が無理やり笑って周りを安心させようとしていたこと。

ホントは怖くて泣きたいのに、それを我慢していたこと。



「怖かったんです、すっごく...っ...怖かった...っ」



ポロポロと零れだした涙が、頬を伝っていく。

それを隠すように要さんの胸に顔を埋めると、背中を撫でていた手が今度は頭をポンポンと撫でてくれた。



男の手から必死に逃れようとしている間中ずっと、私の心は恐怖心でいっぱいだった。

これから自分がどうなるのか。

それを考えると、怖くて怖くて堪らなかった。



だけど目が覚めて無事が分かると、今度は迷惑をかけてしまった人たちの顔が浮かんだ。

私が泣けば、間島さんや二宮さんはきっと今以上に自分を責めるだろう。

そう思ったからこそ、笑顔を見せて「大丈夫です」と言うしかないと思っていた。



「もう、大丈夫だ」



しっかりと、はっきりとした要さんのその声が耳に届くと、私は余計に声を詰まらせ泣いてしまった。



『大丈夫』

その言葉を望んでいたのは、本当は私だった。



「思ってることは、口にしたらいい。我慢しなくていい」



要さんは、優しい。

クールに見えるけど、いつだって周りのことをちゃんと見て、困っている人がいたら手を差し伸べてくれる。

そんな人だ。



でも...その優しさが、やっぱり私の胸を苦しくさせる。


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