控え目に甘く、想いは直線的
必死で言葉を探す私に要さんはまた笑う。そして、ちょっと意地悪な顔して聞く。


「嫌じゃないなら、好き?」


「えっ? あの……」


好きだけど、スムーズに口から出てこない。

男の人に好きだと言ったことがないから、緊張してしまう。たったの二つの言葉を言うのが、こんなにも緊張するとは思いもしなかった。

ちゃんと言わないと嫌いだと誤解されてしまう。

すぐ言わないと……。


「いいよ。焦るつもりはないから。そろそろ涼が帰って来るかもしれないし、帰ろうか? 行こう」


要さんには腕を引っ張られて、ドアが閉められる。

伝えられないことがもどかしくも感じたけど、この先に進まなかったことには安心していた。

今度はちゃんと心構えをしておこう。何をされても、何を言われても、伝えたいことはちゃんと伝えよう。要さんには私の気持ちを分かって欲しいから、伝えるべきことは躊躇うことなく、伝えよう。


家まで向かう車の中では、要さんが何も話さないから私も静かに座っていた。

伝えられなかった言葉を伝えたいけど、今ではないように思える。

またの機会にしようかな。
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