控え目に甘く、想いは直線的
延期になっていた大石さんの誕生日会の日程を決めたのは要さんだった。

考えればすぐに忙しい時期だと分かるのに、何も考えないで決めたのだろう。そうでなければ自分で決めたことに文句は言わないはず。


「祝ってもらって嬉しい年齢でもないだろ?」


「今さら何を言うんですか? 中止にすると言ったら、野々宮さんと二人で行きますからね。ね、野々宮さん」


「はあ、そうですね」


歌を歌うほど楽しみにしているのだから、祝ってあげたい。もし中止になるとしたら、私だけでも。


「ふざけるな」


「ふざけてなんかいませんよ。俺は野々宮さんがいれば十分ですから」


「分かった。予定通り、明日祝ってやるから」


「全く野々宮さんが絡むと素直じゃないんだから。要さん、分かりやすいですよね」


「いちいちうるさい」


いつものごとく、軽い口調で話す大石さんに要さんが不機嫌になる。

大石さんは楽しそうだけど、不機嫌な要さんにされるのは困る。どうやって話し掛けようかと悩んだけど、おそるおそる声を掛ける。
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