控え目に甘く、想いは直線的
不可欠な甘さ
最終面接を行った面接官の三人が小会議室に二日間こもり、合格者20人を選考して、大石さんがそれぞれに合格通知を送った。その後、合格者から入社の意志が返ってくる。

一人だけ他社への入社が決定したと断りの連絡があったが、新たに合格者を決めることはなく予定よりも少ない19人の内定が決定した。


内定が決定するまで忙しかったこともあり、私と要さんは想いが通じあったのにもかかわらず、デートらしいデートをまだしていなかった。

要さんは休日も仕事をすることが多かったから、私は暇な休日でもメッセージのやり取りをするだけで我慢していた。


「終わり! 今日からしばらくは早く帰れますね! まずは早く帰れる記念にビアガーデン行きましょうか」


早く帰れるのがとにかく嬉しい大石さんは拳を上げて、意気揚々としていた。

それにしても、社会人になってからは一日が終わるのが早い。気付けば梅雨も明けて、夏本番を迎えていた。

要さんが浮かれる大石さんのテンションをあっさりと落とす。


「あー、断る。今夜は野々宮と寿司を食べに行くから」
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