控え目に甘く、想いは直線的
ノックを三回して、「どうぞお入りください」と中から声が聞こえたので「はい」と返事をしてドアを開ける。

入室前に会釈をして「失礼します」と面接官の前にある椅子まで歩みを進ませて、椅子の横に立った。

大学名、学部名、名前をハッキリと言い、「本日はよろしくお願いします」と頭を下げた。

多分ここまでで失敗はない。ここから先が勝負となるが、動揺してはいけない。落ち着いた対応が大事だ。


「座ってください」


「はい」


姿勢を伸ばして浅く座り、真っ直ぐと面接官である人事部長の顔を改めてしっかりと見た。

あれ?

どこかで会ったことあるような……。


「では、まず大学で得たものを教えてください。……ん? あれ? 前にどこかで会ってませんか?」


思っていたことを言われて、私は記憶の糸をたぐる。

そんなに古くはない、新しい記憶だと思う。目の前にあるこの顔、この髪型で見たことがあるから。

どこだろう?

こんなに整った顔を見たことがあるなら俳優とか……テレビで見たのだろうか?


「あ!」


「ああ、そうか!」


人事部長もほぼ同時に思い出したらしく、手をポンッと、叩いた。
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