控え目に甘く、想いは直線的
その後、頭がぐらぐらして視界が揺らいだ。


メイン料理までは食べた記憶があるのだけど、それからどうしたか覚えていない。デザートはチョコケーキだったはずだけど、食べた記憶がない。

だけど、朝目が覚めた私は自分の部屋のベッドで寝ていた。

パジャマに着替えていなく、そのままの服だし、就職するようになってちゃんとしているメイクもそのままだった。

こめかみを押さえながら、階段を降りる。


「頭が痛い……」


「夕美、起きたの? 今日が休みで良かったわね。昨日、送ってくれた部長さんにちゃんとお礼を言いなさいよ。バイバーイなんて手を振って、恥ずかしかったわ」


リビングでテレビを見ていた母は信じられないことを言う。

部長が送ってくれた?

部長にバイバーイと手を振った?

本当なの?


「でも、紳士な人だったよねー。飲ませすぎてすみませんって、丁寧に謝っていたしね」


姉までおかしなことを言う。

あの部長が丁寧に謝った?

あり得ないし、想像出来ないし、信じられない。

二人は誰のことを言っているのだろう?


「シャワー浴びてくる」


頭を冷やそう。

母と姉に何も答えないで、バスルームへ行った。
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