控え目に甘く、想いは直線的
何も答えない私に痺れを切らした様子の部長は短く息を吐いて、私の元に来た。

返事をしなかったことを怒られる?

横に来た部長に緊張して肩がビクッと震えた。


「野々宮。寝ていないよな?」


しっかりと目を開いている私が寝ているようには見えないだろう。

だから、これはきっと嫌みだ。もう一度、無視をすればいいのだろうけど、出来ない。

出来なかった…。


「ん? どうした?」


「えっ! あ……」


ミスした用紙に目を向けていた私の顔を覗くように近付いてきたから、体が大きく揺れてしまい、持っていた用紙まで落としてしまった。

ひらりと床に落ちた用紙は部長の手によって拾われる。受け取ろうと手を伸ばしかけたが、部長はそれを持ってシュレッダーに行った。


「あ……」


「ミスしたものはいらないだろ?」


「はい、ありがとうございます……」


わざわざシュレッダーにかけてくれたことには、お礼を言うしかない。
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