控え目に甘く、想いは直線的
笑顔を一変させて、いつもの顔になり、また眉間に皺を寄せる。

ああ! 貴重な笑顔が終わってしまった。また笑わないかな。


「あの!」


「なんだよ」


またしても不機嫌そうな顔に怯んでしまうが、ここは怯んでいる場合ではない。

もう一度笑ってもらうためにやらなくてはならない。


「本当にありがとうございます! お礼は何がいいですか? 部長は何が好きですか?」


だけど、どうしたらいいのか分からなくて、何の脈絡もない質問を投げかけてしまう。

変顔をしたら笑ってくれたかもしれない。今からしてみようか。

変顔にしようと顔に力を入れたとき、「ふっ」と気の抜けた笑い声が聞こえた。


「なにそれ? なんでもしてくれるわけ? 俺が好きなものを聞いてどうするわけ?」


部長がまた笑った。でも、さっきの笑顔とは違う。私の見たい笑顔ではなく、意地悪な笑顔だった。求めている笑顔でないことに心の中で落胆する。
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